フランスで医療機関を受診する際に知っておきたいこと

フランスで生活するにあたって、現地の保険制度(3ヶ月以上フランスへ滞在される場合は公的医療保険へ加入可能)を含めた医療事情に関しては、日本と勝手が違うこともあり、心配なところでしょう。フランスの医療保険制度についての記事でもご紹介したとおり、フランスは社会保険の仕組みが複雑です。

フランスでは、病院と個人医院の区別が日本よりもはっきりしています。また、血液検査などが必要になる場合、受診する医療機関によっては検査機関への予約が必要になる場合があります。日本と同じ感覚では医療機関を受診することはできませんので、戸惑う方も多いかと思います。こちらの項目では、フランスで医療機関を受診する際に知っておきたい事柄を、いくつかご紹介いたします。

■もくじ(ページ内リンク)

フランスの医療機関の仕組みと特徴

医療機関を受診するには(通常の場合)

救急で医療機関を受診する

最後に

フランスの医療機関の仕組みと特徴

※情報は2017年7月現在のもの。

医療機関の種類

医療機関には、病院をはじめとしていくつかの種類があります。

・診療所(Cabinet médical

一般内科医や専門医など、開業医の医院です。街中に点在しており、アパルトマンの一部屋を診療所としている場合がほとんどで、日本のような診療所独自の建物があることは非常に稀です。

・公立総合病院Assistance publique

入院や手術などを行うことができる一般的な総合病院です。費用は安いですが、予約で埋まってしまっていることも多く、受診までに時間がかかります。救急外来は予約なしで受診可能。

・大学病院センターCentres hospitalier universitaire

医療の研究や医師養成も兼ねた総合病院で、高度医療を受けることができます。フランスでは医学部があるのは公立大学のみとなっています。

・私立総合病院(Hôpital Privé

病院によって異なりますが、費用が高くなる傾向にあります。しかし、迅速に対応をしてもらえるなどのメリットがあります。救急外来は予約なしで受診可能。

など

その他にも検査機関や薬局、さらには検診を行う施設などがあり、医療施設の内訳は多岐にわたります。

分業制

フランスは医療分業制となっていますので、様々な種類の医療機関が点在しています。1つの医療機関で診察から検査、場合によっては薬の処方まで行える日本とは異なり、フランスではそれぞれの医療機関が独立し、それぞれが連携して患者の治療にあたるのです。

一般的な流れとしては、まずはかかりつけの主治医(おもに一般開業医)に受診し、必要があればそこから専門医(Médecin spécialiste)や諸機関に紹介してもらうという流れになっています。直接専門医に受診することも可能ですが、公的医療保険の還付率が下がってしまうため、結果的に医療費が高くなってしまいます(例外あり)。

また、医薬も分業されています。薬の処方を受けるには、必ず処方箋を持って薬局に行く必要があります。医師によって処方される薬に関しては、クリニックや病院で受け取ることはできません。

かかりつけ医制度

フランスの医療制度ではかかりつけ医制度が採られており、分業制を成り立たせるために重要な役割を担っています。

かかりつけ制度の仕組みは、公的医療保険(Sécurité sociale)へ加入した後、フランスの医師(Sécurité sociale加盟医)をかかりつけ医に指名します。

医療機関を受診したい場合は、まず指名したかかりつけ医のもとへ行き、必要であればかかりつけ医から専門医や検査機関などを紹介してもらい、受診するという仕組みになっています(義務ではありません)。

かかりつけ医を通さずに受診した場合は、Sécurité socialeの払い戻し率が少なくなる、などの問題が出てきます。

かかりつけ医には、最寄りの一般開業医を指名することが多いですが、医師の選択は自由です。他の地域の医師や専門医であっても、希望する医師の同意を得られれば、かかりつけ医として登録できます。

かかりつけ医を探す際には、現地の友人や登録している教育機関、近隣の薬局に問い合わせてみると良いでしょう。

パリなどの大きな都市では、日本人医師や日本語で対応できる医師が開業しています。フランス語に不安があるようであれば、こういった医師に依頼するのもひとつの手段です。また、Assurance maladieの医師検索サイトからも探すことができます。

・Annuaire santé :http://annuairesante.ameli.fr/

緊急で病院の救急外来を受診するときや、かかりつけ医がバカンス中などで不在の時は、例外的にかかりつけ医制度に従わなくても、保険の還付を受けられるのでご安心ください。

その他にも例外はありますが、Sécurité socialeからの償還をきちんと受けるためには、かかりつけ医を通して受診した方が良いことを理解しましょう。

公立病院と私立病院の違い

基本的に、開業専門医がさらに専門的な治療や手術を必要と判断した場合には、紹介状と共に病院を紹介してくれます。病院を受診する際には、予約が必要となることがほとんどです。

前述している通り、フランスには公立病院と私立病院があります。公立病院は医療費が抑えられており、高度な治療が行われることが多いと言われています。しかし、費用が抑えられている反面、受診可能な時期が1~2ヶ月先になってしまうこともあります。一方、私立病院は、医療費は高額になりがちですが、サービスの手厚さが魅力です。公立病院に比べて対応が早く、直接希望する専門医に予約を取って治療を依頼することができます。公立・私立それぞれに利点がありますので、ご自身の求める医療や加入している保険などを考えながら、適切な病院を選択したいものですね。

医療機関を受診するには(通常の場合)

フランスで実際に医療機関を受診する場合の手順についてご説明します。

こちらの項目で、基本的な流れをつかめるようにしましょう。また、留学生にとって知っておくべき例外的な部分にも、触れながら進めていくことにします。

かかりつけ医を受診する

まずは、登録したかかりつけ医に受診することが基本となります。多くは一般開業医(Médecin généraliste)を選択すると思いますが、こちらで病状を伝え、必要があれば他院・専門医を紹介してもらいましょう。主治医を通すことで、Sécurité socialeからの診療費還付を通常通り受けられるようになります(特定の科や条件下などでは主治医を通さなくても通常の還付率が適用される場合あり)。

専門医・病院を受診する

かかりつけ医が、より専門的な治療が必要と判断した場合には、その医師の紹介の下、専門医や病院を受診することになります。フランスでは専門医や病院を受診する際、予約が必要なことが多いですので、事前に問い合わせをしましょう。

ただし、歯科・口腔外科専門医に関しては、かかりつけ医を通さずに受診した場合でも、通常の還付率で医療費の払い戻しを受けられます(大きな外科的処置が必要な場合を除く)。

検査を受ける

一般開業医(Médecin généraliste)の多くは、診察室に検査機器を持っていません。検査が必要な場合は、医師からの紹介によって外部の検査機関を受診し、検査を受けることになります。医師から渡された検査指示書を持参し、所定の検査を受けるようにしましょう。

検査結果が後日になるようであれば、郵送か患者が直接受け取りに行くかを選択することができます。それと同時に医師にも検査結果が送付される仕組みになっています。

検査には、予約が必要なものもあるので注意してください。検査機関の情報については、かかりつけ医受診の時に問い合わせてみると良いでしょう。

救急で医療機関を受診する

救急時の受診についてご紹介いたします。フランスの一般開業医や専門医、病院の通常外来では、緊急の病気やケガの時に対応してもらえないことが多々あります。緊急の際には、総合病院の救急外来(Urgence)へ向かうようにしましょう。

救急対応可能な医療機関や救急車の探し方は、以下の方法があります。患者の状態にあった形で治療が受けられるように、適切な医療機関や移動方法を見つけましょう。

SOS Médecin http://www.sosmedecins-france.fr

フランス全土の緊急医師を探せるサイトです。フランス語でコミュニケーションを取る必要がありますが、検索した医師に電話をして診察を依頼する、またはSOS Médecinに直接電話をして指示を仰ぐことができます。

医師の検索は、メインページ左の「Carte d’implantation」をクリックすると、フランスの地図と共に住所や地域、街を入力して最寄りの救急医を検索できるページに飛びます。そちらで必要項目を入力して医師を絞り込みましょう。地図上に表示される医師の所在地をクリックすると、連絡先等の情報が得られます。

Annuaire santé.com ‘’Ambulances” http://www.annuairesante.com

こちらのサイトでも、通常の医療機関検索と共に、救急搬送可能な最寄りの機関を検索できます。民間の救急会社になりますが、自力で医療機関までの移動が困難な場合には、救急車での搬送を依頼できるこちらが便利です。

メインページの「Quoi ?」の欄に「Ambulance 」を入れ、「Où ?」の欄に検索したい地域を入れ「Trouver」をクリックすると、指定した地域の救急搬送可能な施設が表示されます。

SAMU(医師同乗救急車)TEL : 15

自力での移動が困難な場合には、こちらの救急機関も便利です。フランスの公的機関になるこちらの電話番号に連絡することで、医師が同乗している救急車を呼ぶことができます。医師の診察を車内で受けながら医療機関まで搬送してもらえるので、こちらも緊急時に便利です。

※参考までにパリ市内及びマルセイユの救急医療機関を挙げておきます。

<パリ>

・Assistance PubliqueHôpitaux de Paris http://www.aphp.fr

・パリ救急医師会 Urgences Médicales de Paris http://www.ump.fr

・救急歯科 SOS Dentiste TEL : 01 43 37 51 00 (夜間・休日も受付)

・救急眼科 SOS Ophtalmologie TEL : 01 47 07 64 64

<マルセイユ>

・HOPITAL DE LA CONCEPTION TEL : 04 91 38 00 00 http://fr.ap-hm.fr/nos-hopitaux/hopital-de-la-conception

・Hôpital de la Timone TEL:04 91 38 00 00 http://fr.ap-hm.fr/nos-hopitaux/hopital-de-la-timone

など

最後に

冒頭でも触れていますが、フランスへの滞在期間が3ヶ月未満の方は公的医療保険へ加入することができませんので、必ず海外旅行保険へ加入しましょう。

この記事ではフランスの医療制度や、医療機関の受診方法などをご紹介してまいりました。フランスで医療機関を受診する場合には、緊急性の高さによってかかりつけ医に予約をして受診するか、救急外来で受診するかが決まります。

緊急性の高さを見極めるのは難しい面もありますよね。海外旅行保険では、日本語対応可能なサポートデスクを各社用意しています。万一、体調が悪くなってしまった場合は、サポートデスクへ連絡すると必要に応じて緊急搬送の手配をしてもらえます。また、キャッシュレスメディカルサービスを利用することもできますので、治療や診察にかかった費用などを支払う必要がありません。お金の心配をせずに医療機関を受診できたり、何かあった際にサポートを受けることができるというのは非常に心強いですね。

海外旅行保険をご検討中の方は、海外旅行保険比較サイトi保険をご覧ください。