フランスで薬局を利用する際に知っておきたいこと

フランスで薬局を利用する際に知っておくと便利なことや、日本との違いなどについてご紹介をしていきます。

フランスでは古くから医薬分業制が採られています。そのため、医師から処方箋を出された場合、街中の薬局(Pharmacie)へ処方箋を持参し、処方を受けることになります。薬局では、処方箋の薬を受け取ることはもちろん、日本と同様に市販薬の購入も可能です。

■もくじ(ページ内リンク)

フランスの薬局の特徴

処方薬として渡す商品を選ぶ権利

ジェネリック医薬品に変更する権利

対面販売が主流

処方箋の薬は箱単位

日本のドラッグストアとは異なる位置づけ

夜間や休日の割増料金制

処方箋を薬局に持参する

Carte Vitaleを薬局で提示

薬剤費の支払とFeuille de soin

フランスの薬局の特徴

先述したとおり、フランスでは古くから医薬分業制となっています。医師と薬剤師を完全に分けているため、病院内で薬を処方されることはありません。現在、日本でも医薬分業制が浸透してきたことにより、診察を受けた病院内で薬を受け取る機会も減ってきましたね。

しかし、フランスと日本の薬局・薬剤師を比べると、異なる点が出てきます。まずは、日本と異なるフランスの薬局・薬剤師の特徴(2017年7月現在)を確認してみましょう。

処方薬として渡す商品を選ぶ権利

フランスの薬剤師は、患者に処方薬として渡す商品を選ぶ権利があります。

具体的には、成分名が記載された処方箋に対して、薬剤師は同じ成分の商品の中から処方薬を選択して患者に渡すことができるというものです。

これは、2002年の法改正により、医師は商品名ではなく成分名で処方箋を記載できるようになったことに由来しています。

特に、比較的安価なジェネリック医薬品(後発品)は、国が負担する医療費を抑えるのに有効なため、フランスではジェネリック医薬品が強く推奨されています。

日本でも、ジェネリック医薬品の使用率は増えていますが、まだ使用率が高いとはいえません。

ジェネリック医薬品に変更する権利

医師の指示がある場合を除いて、薬剤師は医師の許可を得ることなく、処方薬をジェネリック医薬品に変更することができます。

2012年以降、フランスの薬局では、ジェネリック医薬品への変更を承認しない患者に対して、償還払い(患者が一旦全額を支払い、後日申請することで、超過分が返還されるしくみ)のみの対応となってしまいます。

つまりこの場合、患者が薬代を全額立て替え、ご自身でSécurité socialeへ保険適用分の返還を請求する必要が出てきます。

後日一部が返還されるとしても、金銭的負担が大きくなってしまうのは避けたいですよね。

また、TFR(責任包括価格)と呼ばれる特定の医薬品に対して定められた償還限度額があるのですが(ジェネリック医薬品の平均価格に設定)、新薬を希望して償還限度額を超えた分は患者自身で負担することになります。

薬局で処方箋とCarte Vitale(健康保険証)を提出する際、薬剤師からジェネリック医薬品への変更の可否を尋ねられますので、希望を伝えましょう(通常はジェネリックに了承) 。このように、フランスでは、ジェネリック医薬品の変更も基本的に薬剤師が行うようになっています。

対面販売が主流

フランスでは市販薬であっても、多くの薬局で対面販売方式が基本となっており、カウンター内にいる薬剤師に言わないと商品を手にとって見ることができません。

2008年の法改正により、処方箋不要の市販薬の中で、フランス政府が指定した一部に関しては、消費者が自由に手に取ることができるようになりましたが、対応していない薬局も多くあります。

対面販売方式は不便に感じてしまいますが、体調の相談やアドバイスがもらえることを考えると、安心感がありますよね。市販薬でも薬を購入したいときは、一度薬剤師に声を掛けてみましょう。

処方箋の薬は箱単位

日本では医師から処方された薬を薬局で受け取ると、必要な分だけ用意してもらえますよね。しかし、フランスの薬局では必要な分を用意するのではなく、箱単位で販売されます。

日本人からすると、必要以上の量を購入することに抵抗を感じてしまいますよね。箱単位での購入のため、薬が余ることもよくあります。使用期限や不要な薬は、薬局へ持っていくと回収してくれます。薬を一般ごみとして処理すると有害物質が発生する可能性があるため、薬局で回収して処分することが義務付けられているためです。

日本のドラッグストアとは異なる位置づけ

日本のドラッグストアは、処方箋の受け渡しを行う他、日用品や生活雑貨、食料品などの幅広い商品を扱っているところが普及しています。しかし、フランスには日本のドラッグストアのような薬局は存在しません。

フランスの薬局では、健康のためのサプリメントや歯科用品、コンタクト用品、美容用品なども扱っているところは多いですが、医薬品の一部として取り扱っています。日本のように、何でも揃うドラッグストアとは異なる位置づけになっています。

夜間や休日の割増料金制

フランスでは、薬局を含めた多くのお店で日曜日や祝日がお休みです。また夜間に空いているお店も多くありません。

突然の体調不良で薬が欲しいときに、薬局がどこも空いてなかったら困ってしまいますよね。そこで、薬局に関しては夜間・休日当番制で開店しています。

地域で最低1軒は、営業時間外で営業しており、これを「Pharmacie de garde」と呼びます。

当番になった薬局は、夜間・休日に薬を販売する場合、処方箋1枚につき4~6ユーロの割増料金を請求することができます。また、処方箋不要の市販薬にも割増料金がかかってしまう薬局もあるため、夜間や休日に緊急で処方してもらう際には、注意が必要です。ただし、都市部などの普段から夜間・休日も営業している薬局の場合、割増料金がかかることはありません。

緊急当番の薬局は、下記のサイトで検索して頂けますので、ご参考ください。

PHARMACIE DEGARDE : https://www.pharmacie-de-garde.org/

Annuaire desPharmacies de France : http://www.pharmaciedegarde-france.com/

フランスの薬局の利用方法

つづいては、フランスで薬局を利用する際に必要なものや、注意点を見ていきましょう。

処方箋を薬局に持参する

医師から薬の処方箋を受け取ったら、薬局へ持参しましょう。一般的な処方箋の有効期限は、3ヶ月間です。期限以内に購入しないと無効になってしまうので、早めに購入しましょう。有効期間は処方箋にも記載されていますので、確認してみてください。また、慢性的な疾患などで長期的に薬を服用している場合には、最長1年分の処方箋を医師に書いてもらうことができます。

フランスでは、一度に数ヶ月分の薬を患者に渡すことは原則できません(長期旅行などの例外的理由を除き、一度に最大1ヶ月分)。しかし、こちらの処方箋があれば、処方期間以内に薬局で、同じ薬を医療保険適用価格で購入できます。ただし、処方箋が発行されてから3ヶ月以内に一度も処方を受けないと、無効となってしまいますので注意が必要です。

Carte Vitaleを薬局で提示

前述のとおり、薬局での処方薬もSécurité socialeによる補償を受けることができます。加入している場合は、薬局でも必ずCarte Vitaleを提示しましょう。

フランスでは、薬の重要度などにより償還率は異なります。一般的に、重症度が高く、薬が手放せない疾患(糖尿病など)に投薬されるような薬は、償還率が高くなります。状況に合わせて、薬代の負担割合が変わるのは非常に合理的ですよね。

薬剤費の支払とFeuille de soin

Carte Vitaleを提示した場合、薬局でカードを機械に通し、Sécurité socialeによる還付額を差し引いた金額で処方薬を購入できます。つまり、薬局側でSécurité socialeへの保険適用分の請求を行うため、最初から保険が適用された金額だけを支払えば良いのです。もちろん、Sécurité sociale対象外の処方薬やフランスの医療保険に未加入の場合には、全額自己負担となります。

また、Carte Vitaleを忘れた場合は、一度薬局で薬代を全額立て替えなければなりません。ご自身で立て替えた際は、Feuille de soinという払い戻し請求用紙を、薬局から受け取りましょう。

処方箋の複写を添付した請求用紙へ必要事項を記入し、Assurance maladie事務所に提出することで、ご自身の銀行口座に還付金が振り込まれます。提出の際には、Feuille de soinの薬局記入欄に記入がされていること、薬局名等のスタンプが押されているかどうかをご確認ください。