フランス留学中に仕事を探す際の注意点

留学生としてフランスに渡る場合、もちろん学業が生活の中心となるでしょう。しかし、せっかく異国にいるのですから、現地での生活を楽しまないともったいないですよね。

勉強と並行して収入を得たい方や、経験として働いてみたいという方もいらっしゃると思います。

フランスでは、長期の学生ビザ(滞在6ヶ月以上が対象、滞在6ヶ月未満の一時的長期滞在ビザは対象外)で渡航する留学生には、一定時間の就労が認められています。フルタイムではありませんが、生活費の一部を賄う程度の収入を得る程度の就労は可能です。では、フランスの学生の仕事を取り巻く状況はどのようになっているのか。ここでまとめてみたいと思います。

■もくじ(ページ内リンク)

学生ビザでの就労規定

フランスの雇用契約について

仕事を探す

求人に応募する

応募の後とその他注意点

学生ビザでの就労規定

在日フランス大使館ホームページによると、学生ビザを持つ留学生は、法定労働時間の60%の労働が認められています。(2017年7月現在、https://jp.ambafrance.org/article3731 参照)つまり、年間964時間以内、週23時間までであれば働いても良いのです。その他の就労規定項目に関しては、現地のフランス人労働者と同様のものが適用されます。

給与は、フランスの法定最低賃金(SMIC:スミック、2017年1月現在は時給9,76ユーロ)が定められており、最低賃金以上の金額で提示されることになります。

しかし、留学生を含む多くの労働者は、法定最低賃金から雇用開始となることがほとんどです。また、留学生であっても働いている場合、保険料などは給与から天引きされます。給料日に渡される給与明細(Fiche de paye/Bulletin de paye)を確認してください。

パートタイムの収入も、留学中の生活費として組み込んで考えている方は、最低賃金と法定就労時間で得られる金額を一つの目安として検討しましょう。

フランスの雇用契約について

フランスの雇用契約は、大きく分けて以下の2種類となります。フランスでは、日本のように「正社員」「契約社員」「パート」「アルバイト」といった概念は存在しません。「終身雇用」か「有期雇用」となります。

学生向けの仕事を「Boulot d’étudiant/Job d’étudiant」と呼ぶこともありますが、基本的に契約上の区別はありません。

・無期限雇用契約Contrat CDI : Contrat de Durée Indéterminée

通称「CDI(セー・デー・イー)」と呼ばれる契約形態です。名前の通り、雇用期間が定められていない契約となります。こちらの契約下では、問題を起こして解雇されない限り、または退職願(Lettre de démission)を雇用主に提出しない限り、契約が継続します。

ただし、現在のフランスでは、最初の契約からCDIを取得することはかなり難しいとされています。飲食関係の仕事では、初回からCDIを提示してくる場合もありますが、多くの雇用主はCDD(有期雇用)で雇用し、必要に応じてCDIに契約を変更する方式となります。

留学生にとってはCDIで問題ないかと思いますが、フランスで終身雇用を得ることが難しいというのは頭に入れておきましょう。

 ・有期雇用契約Contrat CDD : Contrat de Durée Déterminé

こちらは「有期」の契約ですので、3ヶ月や6ヶ月といった予め雇用期間が決められている契約です。雇用期間以外は、基本的にCDIと同じ内容です(ただし雇用契約書の内容による)。

通称「CDD(セー・デー・デー)」と呼ばれるこの契約は、期限が来たら必要に応じて契約を更新することとなります。終身雇用される前に、試用期間のような扱いとして利用される場合があります。一方、CDDしか提示されない仕事もあります。

ただし、日本の契約社員とは異なり、雇用期間が限定される以外にCDIと条件は変わりません。留学生で仕事をする場合、ほとんどの方がCDDになるかと思います。

また、「季節労働者(Saisonnier)」としての雇用もあります。フランスでは、季節に応じて季節労働者の募集をよく見かけます。

例えば、ワイン作りのためのブドウ収穫シーズンや、夏季の海水浴場のレストランなどです。こういった特定の時期に限定した単発の仕事は、ほとんど契約更新はありませんが、長期休暇中の学生にとっては非常に人気があります。

仕事を探す

日本でアルバイトを探す際、インターネットで求人情報を確認される方が多いのではないでしょうか。しかし、フランスでは日本のような求人情報サイトはあまり期待できません。また、求人広告を店先に掲げているところもあまり多くありません。

ここでは、留学生がフランスで仕事を探す方法をご紹介いたします。まずは、フランスに滞在している日本人向けの情報を利用する方法です。

代表的なものに「Ovni(オヴニー)」などがありますが、これらのサイトには日本人向けの求人が掲載されています。興味のある仕事があれば、電話やメールで問い合わせてみましょう。

現地の求人サイトもありますが、多くはフランス人や現地在住の方向けであるため、条件に合う仕事を見つけるのは難しいかもしれません。

Ovniホームページ: http://ovninavi.com/

Pôle emploi:  http://www.pole-emploi.fr/accueil/

次に、現地の新聞や雑誌の求人欄などから探す方法です。情報サイトと同様、条件や連絡先が掲載されていますので、目を通してみると良いでしょう。

現地在住の方へ向けた求人がメインですが、興味のある仕事があれば、連絡を取ってみてください。

また、学生であれば、最寄りのCROUS(Centre Régional des Oeuvres Universitaires etScolaires)という学生生活を支援する機関に相談してみましょう。こちらでは、「Job d’étudiant」学生向けの仕事も紹介しています。CROUSのサイトからも検索できますので、活用してみてくださいね。

CROUS Paris:  http://www.crous-paris.fr/

※参考までにパリのCROUSを挙げておきます

その他には、働きたいお店や、会社に直接応募をする方法もあります。ここでいう「直接応募」とは、求人の有無に関わらず、ご自身で履歴書と志望動機書を雇用主に持っていく、またはメールなどで送付することを指します。

日本ではあまり行われない方法ですが、フランスではよく見られる光景です。雇用主の目に留まり、条件が合えば、応募者に声がかかるかもしれません。

こちらで紹介してきたように、応募方法はいくつかありますが、日本とは勝手が違う上に、外国人扱いとなります。

異国での仕事探しは簡単ではありませんが、実際に仕事を見つけている日本人がいることも事実です。少ない時間でも働くことができれば、大きな経験になることでしょう。希望するのであれば、根気強く探してみてください。ちなみに、フランスには多くの日本食レストランがあります。日本人のオーナーやシェフのお店もあり、留学生がアルバイトをしている姿をよく目にします。

滞在する街に日本食レストランがあれば、チェックしてみるのもおすすめです。

求人に応募する

興味のある仕事が見つかったら、応募してみましょう。フランスでは、応募の際に「Curriculum Vitae(通常CV:セー・ヴェー、履歴書)」と「Lettre de motivation(志望動機書)」を作成し、これらを雇用主に提出します。その後に話が進めば、雇用主から連絡があり、面接をして採用という流れになります。

ここではCVとLettre de motivationの作成にあたっての注意事項をまとめます。

これらは、日本のように決まった書式があるわけではありませんし、フランス語(場合によっては英語)での作成が求められます。

CVについて

CVは、一般的にA4用紙1枚で収まる程度の長さで作成します。記入する内容をいくつかご紹介いたします。

■左上

・ 氏名

・生年月日と出生地

・国籍

・住所

・連絡先(電話番号・メールアドレス)

・身分(学生、既婚など必要に応じて)

■右上

・証明写真

■中央(タイトル)

・希望職種

中央(希望職種の下)

・以下の項目順に記入

・学歴、職歴(新しいものから順に記入)

※職歴に関しては、在籍年・所属企業名と共に主な勤務内容を箇条書きで記入する

・能力(これまでに学校や仕事で取得してきた資格や技能を記入)

※語学資格やパソコン技能など

・言語能力(各言語名と習熟度を記入)

※例:Français : lu, parlé et écrit, Niveau supérieur(フランス語:読解、会話、筆記、上級レベル)

・その他趣味、特技(スポーツなど)

なるべく、見やすいようにレイアウトすることが大切です。また、記入する情報が沢山あるようであれば、希望する職種を念頭に置いて選択し、しっかりアピールできるようにしましょう。以下にCVのフォーマット例が検索できるサイトを載せておきます。参考にしてください。

modele-cv-lettre.com: http://cv.modele-cv-lettre.com/modele-cv.php

Lettre de motivation(志望動機書)について

フランスでは、履歴書にこちらのLettre de motivationを添付して、希望の職種に応募します。日本では履歴書のフォーマットの中に記入欄がありますが、フォーマットのないフランスでは別紙に作成しなければなりません。A4用紙1枚に収まる程度の量を記入します。内容が端的かつしっかりアピールできているかが重要となります。また、しっかりしたフランス語(文法的・表現的)で書かれていることも重要です。

完成したら、なるべく現地のフランス人に目を通して訂正してもらうことをおすすめします。

左上

・氏名

・生年月日と出生地

・国籍

・住所

・連絡先(電話番号・メールアドレス)

・身分(学生、既婚など必要に応じて)

右上

・応募する企業名・所在地、あれば担当者名を記入

中央(連絡先と企業名等の下)

・目的を記入

※頭に「Objet:」と入れた後に、希望する職種に応募する旨を添える

中央(本文)

・志望動機を記入

右下

・ 応募者の署名・サインを記入

※記入日・場所を添える(例:Le 14 juillet 2016, A Paris)

誤りのない文章で、志望動機やその職種に対する情熱、ご自身の技能を簡潔にアピールすることが重要です。以下のサイトの参考例も活用しながら、まずは一度書いてみましょう。

modele-cv-lettre.com: http://lettre-de-motivation.modele-cv-lettre.com/lettre-motivation.php

応募の後とその他注意点

応募後について少し触れていきます。応募後は雇用主または採用担当者と面接があり、その結果次第で採用が決まります。

問題がなければ雇用契約を行うことになります。雇用契約書は、働き始めてから試用期間中にサインをすることが多いように見受けられます(あくまで学生向けの仕事に限った話です)。

契約書はしっかりと確認し、不明点があれば必ず雇用主に質問するようにしましょう。内容に問題が無ければ、雇用契約書にサインをします。

契約書は雇用主と応募者本人分があり、それぞれにサインをします。応募者の分は、ご自身で管理してくださいね。

契約完了後は、留学生が滞在許可証を申請した県庁(Préfecture)に、雇用主側が契約開始の48時間前までに届け出を行うことが義務付けられています(以前は、留学生が一時労働許可証を申請しなければ、働けなかった)。この雇用主側の手続きが完了すれば、フランスで働くことができます。

基本的に留学生は、Sécurité sociale des étudiantsに加入することになりますが、その場合、すでに保険料を納めているかと思います。

しかし、フランスで仕事をする場合、一般の就労者と同様のフランス医療保険に加入することができ、保険料は給料から天引きされます(契約内容により例外はある)。二重で支払う事態にならないためにも、仕事が見つかったら、大学や最寄りのAssurance maladie事務所への連絡を忘れないようにしましょう。